MESSAGEは弊社代表の太田和隆が社員に向けたメッセージを社外向けに加筆してみなさまに読んでいただくコラムです。
ダイヤ冷ケースの仕事に対する考え方を感じてもらえれば幸いです。

弘兼憲史さんに学ぶ

黄昏

 「課長・島耕作」。漫画家・弘兼憲史さん作品です。島耕作は順調に出世して社長・会長職を経て、現在は社外取締役になっています。なんと40年以上連載され、現在も継続中というビックリものです。

弘兼氏のもう一つの長い連載ものに「黄昏流星群」というのがあります。短編集のような形態なのですが、最近読み直してずしりと響く作品がありました。

 「星春の蹉跌」という作品です。主人公は建設会社を60歳で定年退職した壮年男性。現在は求職中で無職の身。かつては建築設計士の卵の女性と付き合いながら、勤務先の専務の娘に気に入られ、専務の勧めもあってその娘と結婚。「逆玉」と喜んだのも束の間、専務は不祥事で左遷され、同時に専務派の主人公も閑職に追われ、そのまま定年となる。かつてはお嬢様だった妻も今は面影の無い有様。

 職探しに出かけたついでに入ったラーメン店でTVを見ていると、かつて付き合っていた女性「ちひろ」が売れっ子建築設計士として番組に出演している。「人生まちがったかな。くそ面白くもねえ。酒でも飲むか」と入った店が個性的なママが仕切る「マノス」というレトロな雰囲気のBAR。ママの話や周りの雰囲気から30年前にタイムスリップしていることに気づいて店を出ると、本当に街は30年前の姿になっている。「この30年間いいことが無かった。人生を変えるべく、専務の娘ではなくちひろと結婚するように助言してやろう」と30年前の自分を待ち伏せし、説得するのだが、突然そう言われても戸惑うばかりの30年前の自分。仕方が無いので別れて街に出ると、あの「マノス」の看板が。

 店に入ると店内では現在(30年後)のカラオケが歌われている。容姿の変わらぬ個性的なママに「奥さんが心配しているから帰りなさい」と促されて帰宅。自宅の扉を開けると「遅いわね」と家の中にいる妻はなんとちひろだ。30年前に専務の娘との縁談を断った理由で閑職に異動させられて定年まで勤め、妻のちひろは結婚後専業主婦となり現在はパートで家計の足しを稼いでいる現実。

 妻が入れ替わった以外何も変わっていないじゃないかと、職探しの途中で入ったラーメン屋でTVを見ていると、かつての専務の娘が高名なエステティシャンとして出演しており、豪華な住まいなどが紹介されている。

 「何が幸いで何が災いなのか、わからないな」とラーメンを食べていると隣りの席にいつのまにか「マノス」のママが座っている。

「やっとわかった?誰と一緒になってもあなたの人生は変わらない。人生は他人の幸運で決まるものではなくて、あなた自身が決めること」という言葉を残して去っていく。そして主人公は気づく、「自分の人生は自分で切り拓くしかない。他人のツキに便乗しようとしていた自分がまちがっていた」のだと。

 そして店を出ると、タイムスリップした時にやむを得ずに食い逃げをしたことを思い出し、その店に行って事情を話して30年前の代金を払うと、またママが現れ、こうつぶやく。「いいことをひとつすれば、いいことが返ってくる。これからのあなたの人生でいいことがあるかもね」。

 よくないこと、ピンチになると、その原因を自分以外のせいにすることがよくあるように思います。でもやっぱりそれは言い訳。自分の人生は自分で決めているという自覚を持たないとね。運を呼び込むコツはちょっとした「いいこと」を重ねること。弘兼さんからいつも学ばせてもらってます。 興味をもったかたは「黄昏流星群72巻」を。マノスのママに会えるかもよ。

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