平昌オリンピックが閉幕しました。予想を超える日本選手の活躍で数々の話題を提供してくれました。あなたの心に残った場面はどこでしたか?
2月21日に行なわれた女子チームパシュート決勝で、日本は悲願の金メダルを獲得しました。ワールドカップでは昨季の総合優勝に輝き、今季は3戦連続世界記録樹立という実績を誇る日本チームとしては、打倒・オランダを掲げてここ数年チーム作りをしてきた種目でもあり、「金は絶対」という意欲もプレッシャーも強かったそうです。ゴール後、声援に笑顔で応える選手達でしたが、いざ平昌五輪が始まるとオランダの個人種目タイムに底力を見せつけられ、金メダルへの道は遠くなったかのようにも感じられたそうです。
これまであまり知られていなかったパシュートですが、オリンピックのスピードスケート競技の中で唯一のチーム戦です。3人が縦に並んで先頭を入れ替えながら、400メートルのリンクを6周し、最後の選手がゴールした時点でのタイムを競います。縦に並んで滑ることで2番目以降の選手が受ける空気抵抗が弱くなり、後ろの選手が体力を温存させながら滑ることで、先頭に出たときに最高スピードで滑りきることが出来ます。その結果、個人種目をしのぐタイムが出せるのです。
今回金メダル最有力候補と言われた日本女子団体パシュートですが、その陰にはソチオリンピックで絶対王者オランダにおよそ半周12秒の大差をつけられての惨敗という屈辱的な大敗がありました。ここから所属チームで別々に練習していたトップ選手を集め、強化が図られることになったのです。日本代表として招集されたのは、高木美帆選手、その姉である高木菜那選手、170 センチと大きな体格が武器の菊池彩花選手、そして最年少21歳の佐藤綾乃選手の4人。しかし、個人のタイムでオランダチームのメンバーに勝るのはエースの高木美帆選手のみですので、個々の力はもちろんですが、特にチームとしての強化にポイントがおかれました。
◆ 強化のポイント①「一糸乱れぬ隊列」
チームで戦うために、日本チームが常に意識してきたこと、それが「隊列」。前後の選手が、数十センチという極限に近いほどの短い間隔の中で、足の動きや手の動きをピタリとそろえます。少しでもズレれば、足や手が接触して、転倒のリスクさえある高度な技術です。日本はソチから平昌までの4年間、1年に300 日以上のトレーニングを積み重ね、この「一糸乱れぬ隊列」を身につけたそうです。
◆ 強化のポイント②「高速の先頭交代」
日本のチーム力強化の二つ目のカギは「高速の先頭交代」。ソチ王者オランダが約7秒なのに対し、日本はわずか約4 秒で選手交代を可能にしました。日本は、先頭の選手がスピードを落とさずに一度コースの外側に大きく膨らみ、そこから最後尾に戻って先頭を交代することで、先頭選手はスピードの上げ下げをする必要がなく、無駄な体力の消費を抑えられたのです。
◆ 金メダルへの戦略「エースを生かしきる」
オリンピック前の最後のワールドカップで、日本チームは3度目の世界記録を更新!この時に日本がとったのは、エースである高木美帆選手を極限まで生かす戦略。体力のある高木選手が、6周のうち3.5周を先頭で滑ることで、他の選手の体力の消耗を抑える作戦でした。
こうして日本は「一糸乱れぬ隊列」「高速の先頭交代」そして「エースを生かす戦略」でオランダを破り金メダル獲得となったのです。
今回の日本女子パシュートの快挙から我々が学べることは、たとえ個の力が劣っていても、チームの長所を活かしきる緻密な戦略と、それを実現する為の努力が、不可能を可能にすることをだと思います。日々の仕事をしっかりと見直し、どこが強化出来るのか?結果を創る為にはどんな戦略が必要なのか?考え抜く力と不断の努力で、より高い品質やサービスを創り出したいですね。